●フロントハブのオーバーホール
 ジムニー乗りの間でよく話題に上るのがハンドルのブレやガタである。原因は、ブッシュのヘタリ、キングピンベアリングの磨耗、ホイールベアリングの磨耗、ステアリングギアボックスの整備不良、
シール不良等であるが、ジャッキアップして一丁確認してみましょう。先ずタイヤをガクガクゆする。
ナックルは動かないがドラムが動く→ホイールベアリング不良。
ナックルごとガクガク動く→キングピン、キングピンベアリングの不良。
とりあえず今回はホイールベアリングのようなのでOHする。

 
 先ず、ブレーキ周りからバラす。コッタピンを抜き、クラウンナットを緩めてドラムを外す。ここに見えているのがホイールベアリング。リターンスプリングとホールドスプリングを外してシューを撤去。嫌なものが見える。ご老体のシリンダーからはフルードが漏れている。こいつもOH(別項参照)。


 反対側。ガタガタのベアリングが美しく光る。


 また嫌なもの発見。偏磨耗したシュー。ホイールシリンダの固着により片側だけ押され続けた結果このような芸術的曲面を得たようだ。右は
新品シューとの比較。限界です。 新品シュー四枚セット52200-73800 4750円也。

 
 さて、ブレーキ配管を外し(必ずフレアナットレンチを使う。無い人は買いましょう)バックプレートごとシリンダーを外す。このときホールドスプリングのピンを無くさないように注意するべし。シリンダーをバックプレートから外して、ゆっくりOHすることにする。タイロッドエンドプーラーでタイロッドを外し、
本題のナックルバラしに取り掛かる。このようにグリースがブリブリ出てきていたらおしまいです。シール換えましょう。先ずナックルオイルシールのカバーを外し、シール、パット、リテーナーを取り出す。順番を忘れない事。ここのボルトのうち一本は背が高くなっており、コレがハンドルストッパーの役割を果たすので、組む際には元の位置に入れる。この状態で、ナックルはキングピンのみで保持されている状態。

 
 キングピンを取り外し、ナックルごとシャフトをホーシングから引きずり出す。このとき、下側のキングピンベアリングがボトッと落ちるので注意。それなりに重い。構成は右図の通り。真ん中の丸いのがオイルシール。順にリテーナー、パット、カバー。いよいよシャフトを抜いてベアリング交換ですが、これはプレスが無いことには抜くも入れるも出来ませんので工場にもって行きます。オートバイでコレを2本運ぶのはきつい。けど運んだ。なぜ?抜こうと思えばハンマーで抜けます。入れようと思えば古いベアリングを治具にして叩けば入ります。しかしドライブシャフトには等速ジョイントが採用されている為、余計な衝撃はいけません。


 ナックルケース内に約150gのグリースを封入し、シャフト挿入。キングピンベアリング、キングピンを装着し、リテーナー、オイルシール、パット、カバーの順で組み付ける。シーラーの塗布を忘れてはいけません。この辺のシール関係はJA11用でOKです。OHした(別項参照)ブレーキ関連部品、配管、シュー、リターン、ホールド各スプリングを装着。ちゃっかりバックプレートやドラムは再塗装。バックプレートとシューの当たり面にはシリコングリースを塗布。シリンダーとシューの接点も同様。他の油脂類は絶対に使わないこと。


 
 タイロッドを取り付けてドラムをハメる。クラウンナットは念のため新品に交換し、確実に締め付ける。コッタピンの穴をあわせるが、決して緩めて合わせてはならない。これが緩むと・・・・・先ずスプラインが無くなる。次にねじ山が全部飛ぶ。最終的にはドラムごとタイヤが吹っ飛んでいく。ね。嫌でしょ。コッタピンを入れて折り曲げる。ピンは絶対に再使用しないこと(ケチな私でさえ新品を使う)。エア抜き、シューのクリアランスを調整して終了。

参考締め付けトルク
キングピン固定ボルト 200〜300kg-cm
36mmキャッスルナット 1500〜2700kg-cm
ホイールナット 500〜800kg-cm
タイロッドエンド 300〜550kg-cm
ブレーキブリーダープラグ 90〜130kg-cm
ブレーキ配管 140〜180kg-cm